「皆エントリーしたよ、まあ面白いレースになると思う」 開催日の一週間ほど前にカイから電話。昨年のエントリーは30台ほどで、ダイちゃんは2位だったそうだ。 そっかー、わきちなんかはどうしてるの?
「完全に勝つ気でいるよ」 へええ。じゃあ、俺も頑張って応援しなくちゃだな。 「え?ああ、うん」 ……3人でも、いいんだろ? 「へ?」 だからさ……その日光のなんちゃらって耐久レース……3人で出場してもいいんだろっての……? 「え?えええ!?あ、たぶん、いいんじゃ、でも、ええええ!?もしかして!!??」
おう。ハナから応援するっていってたじゃんか。 「そっかあ、そうだよなあ、明日ソッコーで事務局に電話してみるわ」
次の日の昼過ぎ、梨本圭への伝言BBSには 「昨日の件OKだってさ by いか」 という、非常に短いが的を射たメッセージが残されていた。
俺はゴルゴサーティーンが賛美歌13番をラジオで聞くのと同じような気分で、 そのメッセージをゆっくりと眺めた。

ワタンベ選手
「ナンシー、ワタンベがさあ、今日〇〇一人で行ってタイヤの皮剥いてきたってよ、わはは」 コンフェデレーションカップ第2戦、日本が信じられない動きでカメルーンに圧勝した夜、その貴重な2得点を挙げたスズキタカユキと同じ名前のワタンベ(ワタナベタカユキ)のF4に、日光耐久レース用として先日装着したばかりの新品のD208GPは、なぜか表面が溶けていた。それを見てわきちが問いただしたのだという。通常土曜日、ワタンベは仕事であり、また彼のスタンス上これまで一人でコッソリ練習に行くことなど、あり得なかったのだ。
「いいねえいいいねえ、みんなヤル気だねえ」 わきちの舌が回る。もちろんその回り加減は彼の自信を象徴したものだ。 わかんねーぞ、今日だってベツのタカユキが超大活躍したんだからさ、明日も活躍すっかもしんねーぞ? 俺がほんの少しだけ、クサビを打つ。 「まーね、そうかもね、あはは」
しかしわきちはまったく俺の言葉に耳を貸さなかった。 その後梅島組はゼッケン貼りや保安部品取り外しなどレース準備を終え、トランポにマシンを積み込んで、前祝にとラーメン屋で一杯やりながら、次の日の決勝を見据えた会議を遅くまで続けた。
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